日本で働く精神科医のほとんどはDSM(アメリカ精神医学会が発表している診断基準)あるいはICD(世界保健機構WHOが発表している診断基準)に基づいて診断をしています。
ADHD(注意欠陥多動症)の概要
不注意・多動性・衝動性を特徴とする精神疾患です。
不注意には、忘れ物をしてしまう、集中できない、注意がそれやすい、課題に集中して取り組めない。
多動性には、ジッとできない、しゃべりすぎてしまう、座ってられない、次から次へと新しいことをしてしまう。
衝動性には、気分の浮き沈みが激しい、順番が待てない、思ったことをすぐに口にしてしまう。
最初は気分の落ち込みで受診されている患者さんが、診察を通じてADHD(注意欠陥多動症)が背景にあることが後で分かることがあります。ADHD(注意欠陥多動症)の治療薬が開発されていて治療で良くなることが増えてきています。
DSM(アメリカ精神医学会の診断基準)では次のようになっています。
ADHD(注意欠陥多動症)の診断基準
以下の①または②のいずれかを満たすこと。
① 不注意:過去6か月間に、以下の症状のうち6つ以上が存在している。
ⅰ学業・仕事・その他の活動中に注意を持続できず、ミスを繰り返す
ⅱ話しかけられても聞いていないように見える
ⅲ課題をやり遂げることが困難
ⅳ課題や活動の順序立てや整理が苦手
ⅴ継続的な精神的努力が必要な課題を避けたがる
ⅵよく物をなくす(例:鍵、書類、眼鏡など)
ⅶ外部刺激によって注意が逸れやすい
ⅷ日常の活動で忘れっぽい
ⅸ指示に従わず、仕事や課題を途中でやめてしまう
② 多動性・衝動性:過去6か月間に、以下の症状のうち6つ以上が存在する。
ⅰ手足をそわそわ動かす、座っていられない
ⅱ席を離れる
ⅲ不適切な場で走る、よじ登る
ⅳ静かに遊べない
ⅴじっとしていられず常に動き回る
ⅵ過度にしゃべる
ⅶ質問が終わる前に答える
ⅷ順番を待てない
ⅸ他人の活動を妨害・邪魔する
小さい頃からの様子を本人や家族に聞いて診断をつけます。また、CAARS(Conners’ Adult ADHD Rating Scales)、ASRS(Adult ADHD Self Report Scale)、ハロウェルとレイティ検査などの心理検査は参考になります。
ADHD(注意欠陥多動症)の治療方法
①投薬治療:症状が重い場合や長期間にわたって続くようであれば、うつ病で不足しているセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を増やす薬を投与することがあります。
②環境調整:仕事・異動・周囲の協力を得るなどの患者さんの置かれている環境を整えます。
③カウンセリング:心理士さんなどと話を通して治療をしていきます。
ADHD(注意欠陥多動症)と双極性感情障害(躁うつ病)との違い
最近ではうつ病も適応障害もごっちゃに診断されることがあります。うつ病でも適応障害でも治療方法に大きな違いがないので診断は大雑把で構いません。正確に言うと適応障害とうつ病には以下のような違いがあります。
①適応障害には明らかなストレス源(仕事など)があり、ストレス源から離れれば気分の落ち込みなどの症状が和らぎます。一方、うつ病の場合はストレス源から離れても気分の落ち込みが1ヵ月以上続きます。
②適応障害の場合、症状が良い時もあれば悪い時もあり、症状が変動します。一方、うつ病の場合は良い時が一切なくずっと気分が落ち込んでいます。
たとえば、仕事がない休日は気分の落ち込みが軽減するけれども出勤日になると気分が一気に落ち込む場合は適応障害の診断の可能性が高くなります。一方、うつ病の場合は休日になっても休職して仕事を離れて2ヵ月3ヵ月しても一日中気分が落ち込んでいる状態が続き、全く症状が良いときがないことが多いです。
心理テスト
ADHD(注意欠陥多動症)の診断をする補助として心理テストがあります。ASRS、CAARS、ハロウェル・レイティ検査などがあります。
