
日本で働く精神科医のほとんどはDSM(アメリカ精神医学会が発表している診断基準)あるいはICD(世界保健機構WHOが発表している診断基準)に基づいて診断をしています。
適応障害の概要
仕事、学業、家族との不和などがストレスとなり心身のバランスが崩れ、気分の落ち込み、集中力低下、不眠、吐き気、めまいなどが出てくる精神疾患です。
最初は気分の落ち込みで受診された患者さんで適応障害と診断され、その後診察を通じてうつ病・ADHD・双極性感情障害(躁うつ病)など病名が変わることがあります。それは誤診というわけではなく、まずは仮に適応障害として診断書を作成し後に時間をかけて適切な見立てと治療計画を作るという意味合いがあります。
同じ患者さんでも内科に行けば自律神経失調症と言われるし、小児科に行けば起立性調節障害と言われるし、精神科に受診すれば適応障害と言われるし、、、。精神科・心療内科なので厳密な診断基準はなく診断自体が曖昧なことが多いです。診断名にこだわる患者さんがいますが、診断名より今後どのように対応をして治療をしていくかが大事です。
どの診断名になろうとも適切に投薬し、規則正しい生活をし、ストレスを軽減するということには変わりありません。
DSM(アメリカ精神医学会の診断基準)では次のようになっています。
適応障害の診断基準
はっきりとしたストレスの原因があり、ストレス原因(就職・転職・離婚など)が起こってから3ヵ月以内に精神症状が出ていること。症状としては以下があります。ストレス原因がなくなってから6ヵ月以上は症状は続かないです。症状により社会生活・職業生活に大きな支障が出ています。背景にADHD(注意欠陥多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)などがあることがあります。
ⅰ寝れない・寝すぎる
ⅱ気分が落ち込む
ⅲ食べれない・食べ過ぎる
ⅳ不安がある
ⅴ吐き気・動悸・息苦しさ・下痢などの身体症状
ⅵ意欲がなくなる
ⅶ集中力が低下するなど
適応障害の治療方法
①投薬治療:症状が重い場合や長期間にわたって続くようであれば、うつ病に似た治療をします。セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を増やす薬を投与することがあります。
②環境調整:仕事・異動・周囲の協力を得るなどの患者さんの置かれている環境を整えます。
③カウンセリング:心理士さんなどと話を通して治療をしていきます。
適応障害とうつ病との違い
最近ではうつ病も適応障害もごっちゃに診断されることがあります。うつ病でも適応障害でも治療方法に大きな違いがないので診断は大雑把で構いません。正確に言うと適応障害とうつ病には以下のような違いがあります。
①適応障害には明らかなストレス源(仕事など)があり、ストレス源から離れれば気分の落ち込みなどの症状が和らぎます。一方、うつ病の場合はストレス源から離れても気分の落ち込みが1ヵ月以上続きます。
②適応障害の場合、症状が良い時もあれば悪い時もあり、症状が変動します。一方、うつ病の場合は良い時が一切なくずっと気分が落ち込んでいます。
たとえば、仕事がない休日は気分の落ち込みが軽減するけれども出勤日になると気分が一気に落ち込む場合は適応障害の診断の可能性が高くなります。一方、うつ病の場合は休日になっても休職して仕事を離れて2ヵ月3ヵ月しても一日中気分が落ち込んでいる状態が続き、全く症状が良いときがないことが多いです。
心理テスト
SDS(Self-Rating Depression Scale:自己評価式抑うつ尺度)テスト、CES-D(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale:うつ病自己評価尺度)テストなど心理検査があり参考にすることがあります。
