過敏性腸症候群の概要
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)は、大腸や小腸に潰瘍や炎症などの器質的異常がないにもかかわらず、腹痛や便通異常(下痢・便秘・交代型)が慢性的に繰り返される機能性の胃腸障害です。
日本における有病率は10~20%とされ、消化器症状で来院する患者さんの約3割に当たるほどよく見られます。特に若年~中年層に多く、男性は下痢型、女性は便秘型や混合型が多い傾向です。
過敏性腸症候群の原因
脳–腸相関の異常:脳と腸は自律神経を介して密接に連絡しており、ストレスや緊張が腸の動きや感覚に影響を与えやすい状態を引き起こします。
消化管運動異常や知覚過敏:腸の蠕動運動が過剰または低下し、さらに内臓が過敏になって痛みを感じやすくなることがあります。
感染後IBS:急性腸炎などを契機として、その後慢性的にIBSの症状が続くタイプもあるとされています。
過敏性腸証拠群の診断基準
国際的には「Rome IV診断基準」が現在広く用いられています。これによれば、以下の条件を満たす場合にIBSと診断されます:
1.最近3か月の間に、平均して週1回以上の腹痛の反復発生
2.その腹痛が、以下のうち2項目以上に該当する:
排便に関連する
排便頻度の変化を伴う
便形状の変化を伴う
3.また、症状は診断前6か月以上前から存在すること
便の状態から以下の4つのサブタイプに分類されます:
便秘型(IBS‑C)
下痢型(IBS‑D)
混合型(IBS‑M)
分類不能型(IBS‑U)
診断にあたっては、他の疾患(大腸がん、炎症性腸疾患など)がないことを確認するために、血液検査、便潜血検査、大腸内視鏡などの検査が必要になるケースもあります。
過敏性腸症候群の治療方法
IBSの治療は、「症状の軽減」「生活の質(QOL)の向上」を目的とし、生活習慣の改善・心理的サポート・薬物療法を組み合わせます。
① 生活習慣・食事の改善
規則正しい食生活と十分な睡眠
食物繊維の調整(便秘型では摂取を増やし、下痢型では不溶性繊維を控える)
脂肪分・カフェイン・アルコール・香辛料を控える
低FODMAP食(発酵性糖質の制限)が有効な場合もある
② ストレスマネジメント
適度な運動、リラクゼーション法(深呼吸・瞑想など)
認知行動療法(CBT)やカウンセリングが有効なこともある
③ 薬物療法(症状に応じて)
下痢型:整腸剤、止瀉薬、セロトニン受容体拮抗薬など
便秘型:浸透圧性下剤、消化管運動促進薬など
腹痛・腹部不快感:消化管運動調整薬、抗コリン薬
腸内環境改善のためのプロバイオティクス
