日本で働く精神科医のほとんどはDSM(アメリカ精神医学会が発表している診断基準)あるいはICD(世界保健機構WHOが発表している診断基準)に基づいて診断をしています。
強迫性障害の概要
自分では馬鹿げていると思う思考に支配されてしまい、繰り返し無駄な行為を繰り返してしまう精神疾患です。
馬鹿げていると思う思考には様々あります。不潔なのではないか、他人に危害を加えているのではないか、間違いをおかしているのではないかなどがあります。
無駄な行為には手を洗ってしまう、自分が通った道を戻って危害を加えてないか確認してしまう、玄関の戸締りを何回も確認してしまう、3の倍数の数を心の中で勝手に数えてしまう、などがあります。
DSM(アメリカ精神医学会の診断基準)では次のようになっています。
強迫性障害の診断基準
A. 強迫観念がある。
強迫観念は以下 (1) および (2) で定義される:
(1)繰り返し出現し、持続し、不快で侵入的な思考、衝動、またはイメージで、ほとんどの人がそれらを不安や苦痛として経験する。
(2)個人はそれらを無視したり抑えようとする、または他の思考や行動(例:強迫行為の実施)によって中和しようと試みる。
B. 強迫行為がある。
強迫行為は以下 (1) および (2) で定義される:
(1)個人が強迫観念に反応して、または厳密に適用されるルールに従って繰り返し行う行動(例:手洗い、順序を整える)や精神的行為(例:祈る、数える、言葉を繰り返す)。
(2)その行為は、不安や苦痛を予防・軽減したり、恐ろしい出来事や状況を防ごうとする目的で行われる。しかし、その行動は現実的に中和や防止と関連していないか、明らかに過剰である。
C. 強迫観念または強迫行為は、1日1時間以上かかる、または臨床的に意味のある苦痛や社会的、職業的、その他重要な領域での機能障害を引き起こす。
D. その症状は、物質(薬物、薬剤)や他の医学的疾患の生理的作用によるものではない。
E. その症状は、他の精神障害ではよりよく説明できない。
(例:全般性不安障害の過度な心配、身体醜形障害、収集癖、抜毛症、皮膚むしり症、摂食障害、依存症、性的倒錯、うつ病の反芻など)
強迫性障害の治療方法
①投薬治療:症状が重い場合や長期間にわたって続くようであれば、強迫障害で不足しているセロトニンといった神経伝達物質を増やす薬を投与することがあります。
②環境調整:強迫障害で日常生活や仕事に支障が出ている場合、強迫性障害の症状と折り合いがつけるよう仕事や日常生活の負荷を減らしましょう。
③カウンセリング:暴露療法などの心理療法を行います。暴露療法は襲ってくる強迫観念に慣れるために行われます。例えば、手が汚いと感じて何度も手を洗う方の場合、わざと手を汚してしばらくの間手を洗わないようにしてもらうといった感じです。
ADHD(注意欠陥多動症)と双極性感情障害(躁うつ病)との違い
最近ではうつ病も適応障害もごっちゃに診断されることがあります。うつ病でも適応障害でも治療方法に大きな違いがないので診断は大雑把で構いません。正確に言うと適応障害とうつ病には以下のような違いがあります。
①適応障害には明らかなストレス源(仕事など)があり、ストレス源から離れれば気分の落ち込みなどの症状が和らぎます。一方、うつ病の場合はストレス源から離れても気分の落ち込みが1ヵ月以上続きます。
②適応障害の場合、症状が良い時もあれば悪い時もあり、症状が変動します。一方、うつ病の場合は良い時が一切なくずっと気分が落ち込んでいます。
たとえば、仕事がない休日は気分の落ち込みが軽減するけれども出勤日になると気分が一気に落ち込む場合は適応障害の診断の可能性が高くなります。一方、うつ病の場合は休日になっても休職して仕事を離れて2ヵ月3ヵ月しても一日中気分が落ち込んでいる状態が続き、全く症状が良いときがないことが多いです。
心理テスト
ADHD(注意欠陥多動症)の診断をする補助として心理テストがあります。ASRS、CAARS、ハロウェル・レイティ検査などがあります。
